2017年5月20日

カーエアコン・ガスの補充②


カングーのエアコン配管について疑問に思うことを書きました。


前回はカングーの低圧側バルブの径が通常と違っていたので冷媒の補充ができなかったことを書きました。今回はちょっと考察と言うか余談です。ルノーは私のような初心者を惑わせます。

カーエアコンには低圧側バルブと高圧側バルブがあるのが普通です。ところが私のカングーにはどう見ても低圧側バルブしかありません。普通はバルブキャップに低圧側は「L]、高圧側は「H」と書かれているのですが、カングーの一番目立つ場所にあるバルブキャップには 「PA M8×1 Schrader」と表記されています。


自転車乗りの方はSchrader(シュレーダー)と聞けば米式バルブがすぐに思い浮かぶと思います。つまり社名ですね。「PA」はポリアミド、つまりキャップ素材のことを指していると思います。「 M8×1」はネジ寸法でしょう。つまりバルブキャップの表記は配管の種類を示しているわけではありません。


ではこの配管(パイプ)は何かというと「低圧側」であることは間違いないです。このパイプと並行に走っているパイプより太いですので、パイプ径:低圧側>高圧側のセオリー通りです。バルブがセオリーから外れているので説得力無いですが、触ってみて冷たいので間違いないでしょう。

では高圧側バルブがどこにあるのかと見える範囲を探しても見当たりません。
こんな記事を見つけました。
http://e-yasukawa.com/wp3/エアコンガスクリーニング/エアコン作業が出来ない車種/

こちらの記事には「高圧チャージポートのみの車両」としてルノーが挙げられています。「高圧」という言葉が引っかかりますが、バルブ(ポート)が一つということは確かなようです。少なくともガス充てん時には高圧側バルブは使わないのでとりあえずは問題無いです。

配管を追っていくともっと不思議な点に気付きます。バルブの付いている低圧側パイプがレシーバーに接続されているのです。

普通の車の接続図は次のようになります。


①コンプレッサーで圧縮される(低圧・低温・気体→高圧・高温・気体)

②コンデンサーで冷やされる(高圧・高温・気体→高圧・高温・液体)

③レシーバーに溜められる (高圧・高温・液体)

④エキスパンションバルブで気化(高圧・高温・液体→低圧・低温・気体)

⑤エバポレーターで車内の空気を冷やす(低圧・低温・気体)


レシーバーの役割は、(1)ゴミ・水分の除去、(2)気体と液体を分離し液体だけ流す、(3)冷媒の量の調整、です。ここを流れる冷媒は(ほとんどが)液体である必要があり、高圧側に位置しています。

ところがカングーの場合、実物を見ると低圧側(冷媒は気体)に位置しているように見えます。私が持っている下の資料を見ても低圧側です。


気体であっても 「(1)ゴミ・水分の除去」は可能(というか気体の方がやりやすそうではあります)なのですが、「(2)気体と液体の分離」「(3)冷媒の量の調整」はできません。

そういえばレシーバーにはサイトグラスが付いていて冷媒の量を確認できるのですが、カングーのレシーバーにはサイトグラスがついていません。ここを流れるのが気体だったらサイトグラスがある意味が無いですから当然ですね。

上の図を見ると「dehydrator reservoir」と書かれています。 「dehydrator」は直訳で「脱水機」です。水分の除去ということで、これは納得できます。ところが「reservoir」は直訳で「貯水池」つまりリザーバーです。気体をリザーブしてもほんのわずかの量しか溜められません。となるとここには液体が???

エンジンルームを子細に観察します。レシーバーの上部にはパイプが2本接続されており、この配管は確かに上の図に書かれている低圧側です。


しかしレシーバーの下部をよくよく見ると、こちらにも配管が見えます。この配管の一方はコンデンサーに繋がっていて、もう一方はバルクヘッドに向かっています。つまり、上に挙げたカングーの資料画像でいうところの②のラインです。


この配管、レシーバーの下を通過しているだけなのでしょうか?最短距離を通らずに、配管を曲げてわざわざレシーバーの下を通過させているようにも見えます。もしかしたら、この配管はレシーバーに接続されているのでは?そうであるならは、コンデンサー→レシーバー→エキスパンションバルブ、というごく普通の高圧ラインそのままですので納得できる感じです。

気になって眠れない(嘘)ので運転席側のインナーフェンダーをめくって確認してみました。
レシーバーの全容が見えました。


高圧パイプはレシーバーに接続されていない!スルーしているだけです。


入口と出口が上部に一本ずつある普通の形状でした。


エアコン・ラインがどのように接続されているのかがわかりスッキリした部分もありますが、理屈上、なぜこのような接続になっているのかわからず、モヤモヤが残っている状態です。



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