2016年5月20日

アルツール ニッパー


「アルツール」シリーズの一つ、スリーピークスのアルミニッパーです。


アルツールとは

アルツールは日本の主要な工具生産地である新潟県三条市の新潟県作業工具組合が1993年に立ち上げた「アルミ合金で軽量工具を作る」というプロジェクトから生まれた工具です。統一したイメージのデザインで、工具の種類別にそれぞれ違ったメーカーが生産しています。
1997年のグッドデザイン賞を受賞したり、雑誌にとりあげられたり発売当初はそれなりに注目されていたのですが、現在はほとんど目にしません。
ただし現在でも工具の種類によっては受注生産の形で細々と生産されているようで、プロジェクト自体が終了したわけではないようです。
このあたりの詳細がこちらに記載されています。

私が購入した当時はこのような背景は知らず、ただ「デザイン」に惚れて購入しただけです。今ではある程度の情報は知っていますが上記のリンク先は開発に携わったデザイナーが書いているようですので、私の知識よりは正確でしょう。ただし一つ反論ではないですが異論を。

リンク先の記事では「高価」であったことが失敗(あえて失敗と言ってしまいます)の原因と書かれています。たしかに高価ですが、元々マニア向けというか、数を売ろうと考えていたわけでは無いでしょうから許容範囲内の価格だと思います。私はそれよりも大きな原因が別にあると思っています。付加価値をアピールできればそれなりの実績は残せたのではないかと思います。

では何が原因かと言うと、それは販売の問題です。先に記した通り生産はそれぞれ別のメーカーが行いますが、それはそれで良いと思います。メーカーによって得意分野があるでしょうから。でも販売は集約しなければいけないのではなかったでしょうか。私の勘違いかもしれませんが、生産メーカーそれぞれが別々に販売も行っていたように見えます。メーカー直なら在庫管理は正確でしょうが、せっかくデザインを統一したのに統一した販売戦略が立てられなかったのが敗因と思われます。

同じ組合に属すると言ってもそれぞれプライドを持っているメーカー同士なのだからまとめるのが大変だったろうと思います。しかし掛け声倒れにならず製品化までこぎつけることができたのだから、もう少し何とかなったのではないかと悔やまれます。ネットを駆使できる今だったら違う結果になったでしょう。

アルツールのデザイン以外の製品としての特徴は名前の通りアルミでできていることです。もちろんアルミには柔らかくて脆いという工具としては致命的な弱点がありますので、超々ジェラルミンと呼ばれるA7000系の素材が使われています。アルミで強度を持たせようとすると結局はスチールとさほど変わらない重量になってしまいがちですが、この航空機の構造材料などに使われる超々ジェラルミンの鍛造品にすることで高強度、軽量を実現しています。アルミに銅とマグネシウムを加えたものですが腐食に弱いという弱点もあります。



さて、今回紹介するニッパーです。

スリーピークス技研 アルミニッパーAN190
最大切断能力:鉄線1.9mm 銅線2.6mm ピアノ線× ステンレス線× プラスチック○ VVF2芯× より線2.0mm^2
刃部の硬度:HRC55~62
刃部の素材:クロムモリブデン鋼製
呼び寸法:190mm
重量:150g
刃の角度:15°

本体はアルミ合金製ですが先端の刃部はクロムモリブデン鋼製です。先刃こぼれは修理出来ませんがメーカーにて研ぎ直しが可能だそうです。刃部は取り外し可能なようにネジ留めされていてデザイン上の特徴にもなっています。中心の回転部は軽量を考慮して「メタルベアリング機構」が採用されているということですが、たしかに滑らかでいながら適度な重さで抜群の感触です。落下防止ストラップ取り付け穴が付いているというのも良いですね。私には必要ないですが高所作業する場合には必須ですし、この工具の最大の特徴である軽さが生きる場面でもあります。きちんと実用性を考えているデザインだと思います。
アルミ合金製の本体の質感は素晴らしいです。あえてピカピカにせずアルミの素材感が曲面と表面処理に生きています。
悪い点もあります。最大の欠点はヘッドが大きいことです。強度的に大きくせざる負えかったのでしょうが使用環境を選ぶでしょう。
肝心の切れ味についてですが、すみません、検証不足です。無理をして刃が欠けたらそれで終わりなのでなかなか思い切ったことができません。無難なものを切った限りでは特に可もなく不可も無くといった感じでした。









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